マイナンバーと口座番号を紐づける目的は資産の把握ではないのか?

政府や与党は、国が資産状況などの口座内容を把握することはないと言っているようですが、にわかに信用できません。

産経新聞(2020/5/31)
マイナンバーと口座ひも付け 政府は義務化急ぐ

「政府に資産状況を管理されるとの誤った認識が広がった」(元財務官僚)

時事ドットコムニュース(2020/6/2)
「口座内容把握せず」 政府・与党、懸念払拭に躍起

PT事務局長の小倉将信氏は「口座の中身や取引状況が見られ、徴税事務に活用されるというのは全く当たらない」と理解を求めた。

高市早苗総務相は5月22日の記者会見で、災害や相続の際に口座確認が困難になるとした上で、「全ての預貯金口座にマイナンバーをひも付けすることができたら、国民の負担軽減につながる」と表明。同時に「金融資産情報を把握される心配はない」と強調した。
 

本当ですか?

国税庁のサイトのFAQ にこう書かれています。

Q1-2 社会保障・税番号<マイナンバー>制度の導入により、税務行政はどのように変わったのですか。

(答)
社会保障・税番号<マイナンバー>制度の導入により、税務署等に提出する申告書・法定調書等の税務関係書類にはマイナンバー(個人番号)及び法人番号を記載していただくこととなりました。これにより、国税当局においては、法定調書の名寄せや申告書との突合がより正確かつ効率的に行えるようになることから、所得把握の正確性が向上し、より適正・公平な課税につながるものと考えています。
 

すでに税務署は預金情報の把握を行っているのではないでしょうか。


出典:平成27 年度改正関係資料(納税環境整備関係)

税務当局は現行法でマイナンバー付で預金情報を照会できるようになっています。

ただし、現在は預貯金口座の付番は任意のため、一部の口座しか照会できません。
それを全国民の全口座にして、照会作業の効率を上げたいのだと思われます。

そもそも、税務署などの行政機関は毎年膨大な数の預貯金等の照会を行っているようです。


出典:金融機関×行政機関のデジタル化に向けた取組の方向性とりまとめ概要版(内閣官房IT総合戦略室)

平成29年度の1年間で6000万件だそうです。
書面で行っているようですが、これを電子化して効率化するのは既定路線と思われます。


出典:金融機関×行政機関のデジタル化に向けた取組の方向性とりまとめ概要版(内閣官房IT総合戦略室)
 

国税庁は国税総合管理(KSK)システムで納税に関する情報を一元管理しているようですが、このKSKシステムにはすでにマイナンバーで名寄せ・突合する機能が導入されている可能性があります。


国税庁レポート2016
 

出典:社会保障・税番号制度への対応について(国税庁)
 

もし方針が変わって、本当に
「口座の中身や取引状況が見られ、徴税事務に活用されるというのは全く当たらない」
のであれば、政府は法律上もシステム上もそれが不可能なことを証明する必要があると思います。