新型コロナの入国制限緩和、水際対策は大丈夫か?

政府はタイ、ベトナム、オーストラリア、ニュージーランドからの入国制限を緩和する方向のようですが、水際対策は大丈夫でしょうか。

NHK NEWS WEB (2020/6/11)
入国制限緩和 1日最大250人程度で調整 ビジネス関係者ら 政府

新型コロナウイルス対策で日本では外国人の入国が制限されていますが、タイ、ベトナム、オーストラリア、ニュージーランドの4か国とは、感染状況などを考慮して制限の緩和に向けて協議が進められています。
政府は、日本国内のPCR検査の受け入れ態勢などを踏まえ、この夏にも、月に7500人程度、1日に最大で250人程度のビジネス関係者などの入国を認める方向で調整を進めています。
また、国内での感染拡大を防ぐため、入国する人には日本を訪問する前のPCR検査での陰性を証明することを求め、入国時にも空港で検査を行う方向です。

入国制限の緩和で一番心配なのは、海外のウイルスが日本に入ってしまうことです。

緩和する4か国は今のところ感染の拡大が抑えられているようですが、全国民を検査している訳ではないだろうし、第3国から帰国した直後に日本に来るケースも想定する必要があると思います。

入国者には事前のPCR検査の陰性証明と、入国時の空港でのPCR検査が必要になるようですが、気になるのはその信頼性です。
水際対策で行うPCR検査は、国内で感染確認をする時のPCR検査よりも高い信頼性が求められると思います。
入国後2週間の待機措置を廃止するなら、なおさらです。
 

新型コロナの発症日と感染の関係については、この論文がデファクトスタンダードのようですが、

nature medicine (2020/4/15)
Temporal dynamics in viral shedding and transmissibility of COVID-19

このような図があります。


 
一番上のバーが1次感染者の感染のタイミングと発症のタイミングを表しています。
その下が2次感染者の3つのパターンで、
Scenario1は、1次感染者の発症のタイミングで感染した場合
Scenario2は、1次感染者の発症より後に感染した場合
Scenario3は、1次感染者の発症より前に感染した場合
です。
つまり、発症日より前に感染することもあれば、発症日より後に感染することもあるということです。

1次感染者のウイルスの排出量が多い時に2次感染が起きやすいと考えると、感染直後のウイルスの排出量が少ない時にPCR検査をしても、偽陰性になる可能性が高いと思われます。

日本疫学会のサイト に、このように記述されています。

6. 時間とともに変わる検体採取部位のウイルス量
数理モデルの結果、感染1日後にPCR検査が陰性となる割合は100%(感度は0%)、感染4日後では67%(感度33%)と推定しています。発症日(感染後5日目)におけるPCRの偽陰性割合は38%、つまり感度は62%です。

感染直後はPCR検査が全く意味をなさない事が明記されています。

つまり、飛行機に乗る直前に飛沫を吸い込むなどして感染した場合は、入国時のPCR検査が全く機能しなくなってしまいます。
当然、事前の陰性証明も意味がありません。

この問題を回避するには、入国後1週間程度隔離してからPCR検査をするなどの対応が必要だと思います。

いくらやっても100%は無理だとしても、感染者のすり抜けや偽陰性をいかに防ぐかについて、もっと研究する必要がありそうな気がします。
来年はオリンピックもあります。