政府の借金は何回借り換えても構わない

それで庶民の生活がどうなるかが重要だと思います。




BS-TBS 報道1930 (2022/6/10)

「日銀は政府の子会社」というのは正確ではないようですが、事実上、日銀が政府の言いなりになる可能性は十分あると思います。

日本銀行について

日本銀行はわが国唯一の中央銀行です。日本銀行は、日本銀行法によりそのあり方が定められている認可法人であり、政府機関や株式会社ではありません。

日本銀行の資本金は1億円と日本銀行法により定められています。そのうち55,008千円(平成27年3月末現在)は政府出資であり、残りは民間等の出資となっています。
日本銀行の出資者に対しては、経営参加権が認められていないほか、残余財産の分配請求権も払込資本金額等の範囲内に限定されています。

日本銀行法

(政府との関係)
第四条 日本銀行は、その行う通貨及び金融の調節が経済政策の一環をなすものであることを踏まえ、それが政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない。

また、国債を日銀が引き受けることは、国会の議決があれば可能です。

日本銀行が国債の引受けを行わないのはなぜですか?

日本銀行における国債の引受けは、財政法第5条により、原則として禁止されています(これを「国債の市中消化の原則」と言います)。

ただし、日本銀行では、金融調節の結果として保有している国債のうち、償還期限が到来したものについては、財政法第5条ただし書きの規定に基づいて、国会の議決を経た金額の範囲内に限って、国による借換えに応じています。

財政法第5条:
すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。但し、特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない。

日銀を政府の財布にすることは、原則としてはダメでも、国会の議決があれば法的に可能になっています。
また、満期が来た国債を国債で借り換える(借金を借金で返す)ことも可能です。

実際、現状がそのようになっていて、毎年発行される国債の大部分は借換債(借金の返済のための借金)です。


財務省 令和4年度国債発行計画概要

政府の借金を借金で返済している現状については、財務省の理財局長も認めています。
(15分25秒頃~)

YouTube

「一般会計の債務償還費自体が国債の大量発行で賄われているのかというご主旨であれば、おっしゃる通り、借金の返済のための借金をして、という状況です。」

 
満期が来た国債を毎回借り換えたとしても、国債残高が毎年増え続けている状況では、今後、金利が上昇すると利息(利払い費)が急増する可能性があります。


財務省 日本の財政関係資料(令和4月4月)

一方、日銀が引き受けた国債の利払い費に関しては、このような話があります。

日本銀行 企画局長
「日本銀行が保有する国債に対して支払われる利息は、日本銀行の収入の一部になります。」
(19分35秒頃~)

YouTube

「日本銀行は、その利息収入等から日銀当座預金に対する付利金利の支払いやその他の費用等を差し引いて当期剰余金を計算し、さらにそこから法定準備金として積み立てている金額等を除いた残りの額を国庫に納付してございます。」

簡単に言うと、
政府が日銀に払った国債の利払い費は、日銀の経費等を引いた額が国庫に戻される。
ということです。

以下は令和2年度と3年度の日銀の損益の状況ですが、約1.1兆円の利払い費(国債利息)に対して、1.2~1.3兆円の剰余金が出ています。


第137回事業年度(令和3年度)決算等について

何と、利払い費より剰余金の方が多くなっています。
これは日銀が持っているETFの運用益などの収益が増えたことが要因と思われます。

令和3年度の国庫納付額は1.25兆円です。

剰余金の処分については、日本銀行法第53条第1項に基づき、法定準備金を662億円(当期剰余金の5%)積み立てたほか、同条第4項に基づき、財務大臣の認可を受け、配当金(500万円、払込出資金額の年5%の割合)を支払うこととし、この結果、残余の1兆2,583億円を国庫に納付することとした。

また、令和2年度の国庫納付額は1.15兆円です。
この2年間だけ見れば、日銀が保有している国債の利払い費は実質0(逆に政府は儲かっている)です。

今後、国債の金利が上昇しても、利払い費のほとんどが国庫に戻ってくるのであれば、あまり気にする必要はなさそうな気がします。

 
ということで、
「政府の借金は何回借り換えても構わない」
というのは間違いではないようです。
しかも、財政への影響も実質ほとんどない可能性があります。

しかし、気になる事が2つほどあります。

1つはインフレ。
経済成長せずに借金の残高が際限なく増えていった場合、普通に考えると、通貨の価値は下がっていくはずです。
今後、少子化と人口減少で日本経済は縮小する可能性があります。
財政の運営は問題なくできていたとしても、庶民の生活はどうなるのでしょう?

もう1つは日銀で巨額の損失が発生した場合です。
日銀が購入した国債やETF等で損失が出た場合、政府が払った国債の利払い費が日銀の損失補填に使われる可能性があります。
利払い費のほとんどが国庫に戻ってくるとは言い切れないと思います。
また、利払い費だけで損失を補填しきれない場合は、政府が巨額の費用を負担することになるのでしょうか?

こんなニュースが出てきました。

Bloomberg(2022/6/16)
日銀に29兆円の含み損も、市場の圧力でカーブコントロール放棄なら

日本銀行は市場の圧力に屈してイールドカーブコントロール(YCC)を放棄することになれば、保有する国債で巨額の損失に直面するだろう。

日銀のデータに基づいたブルームバーグの計算によれば、政策転換によって国債イールドカーブ全体が100ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上振れした場合、日銀は29兆円の含み損を抱えることになる。

日銀は景気への悪影響を金利を上げない理由にしていますが、日銀に巨額の損失が発生してしまうことも大きな理由かもしれません。

ちなみに、日銀の黒田総裁の任期は2023年4月8日までだそうです。
あと1年もありませんが、どうするつもりでしょう?

 
以下は今から1年以上前の記事ですが、今日本で起きていることを予言したような記述だと思います。

ダイヤモンド・オンライン(2021/4/2)
日本銀行の債務超過転落が長期化したら、何が起こるのか

為替相場は様々な要因で動くが、長い目でみたときに一番根強く作用するのは内外の金利差だろう。ドル金利が上昇し日本が低いままで内外格差が拡大一方となれば、間違いなく円安方向に作用する。

いかに国内経済が弱くても、輸入物価が上昇すれば国内物価もあっさりと上昇に転じ、中央銀行が短期金利を引き上げることができなければ、国内の物価上昇は抑えられず、外国為替市場で自国通貨安が一段と進展してしまい、まさに円安→物価上昇→円安というサイクルに「火に油を注ぐ」事態になりかねない。

 
今、日本政府は国債の借り換えを際限なく繰り返しながら借金を増やしている状態です。
よく、「自国通貨建てで国債を発行する限り、財政破綻はしない」と言われますが、それは「低金利の状態が続く限りにおいて」という条件付きではないでしょうか。

日銀がこのまま低金利の状態を維持し続ければ、政府は財政破綻しないかもしれません。
でも、物価がどんどん上昇して、多くの国民がまともに生活できないような状況になったら、結局、政府もまともに機能しなくなりそうな気がします。

逆に、日銀が金利を上げて巨額の損失が発生した場合は、どのように処理するのでしょう?
日銀が自分で信用創造して損失を穴埋めする??
それとも政府がさらに国債を発行する??
国債の利払い費はどんな金額になるのでしょう??

日本が本当にヤバい状態になる前に、積極財政派の方も財政再建派の方も、真剣な議論をしてほしいところです。