全銀システムが止まると日本の経済活動に壊滅的な影響(その2)

どうやら初歩的なソフトウェアのミスだったようです。

KYODO(2023/10/17)
プログラムミスで容量不足 全銀システム障害


 
三菱UFJ銀行など全国10の金融機関で他行宛ての振り込みに遅れが出た全国銀行データ通信システム(全銀システム)障害は、プログラムの設定ミスで部分的な容量不足が生じたことが原因であることが16日、分かった。システムを運営する全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)は、稼働前に十分な試験を実施したのかどうかが問われそうだ。

関係者によると、7~9日の3連休に実施した中継コンピューターの更新に伴って、機器の基本ソフト(OS)が32ビットから64ビットに変更されたが、必要な容量が確保できない取引が発生したとみられる。

日経XTECH(2023/10/16)
全銀システム障害の原因判明、メモリー不足でインデックステーブルが不正確な状態に

銀行間送金を担う「全国銀行データ通信システム(全銀システム)」で2023年10月10~11日に発生した障害の原因が10月16日、分かった。全銀システムと各金融機関のシステムをつなぐ中継コンピューター(RC)において、メモリー不足に起因し、金融機関名などを格納したインデックステーブルに不正な値が紛れ込んだ。

インデックステーブルはRCのディスク上にあるファイルから展開する。このファイルを作成するプログラムを実行したタイミングで、一時的に確保するメモリー領域が不足し、ファイルの内容が不正確になったという。

これらの報道内容だけでは正確な事は言えませんが、
OSが64bit版になったことで、メモリーの消費量が増えて、今まで問題無く動作していたインデックステーブルの処理でメモリ―不足が発生し、金融期間名などのデータが不正な値になってしまった。
という感じでしょうか。

ファイルから読んだデータを動的に確保したメモリーに保存する処理で、メモリーが確保できない場合の対応が正しく実装できてなかった?

もしそうだとしたら、そんな初歩的なミス、NTTデータのシステムは大丈夫でしょうか・・・

富士通Japanの住民票誤発行よりも、さらに初歩的なミスかもしれません。
(参考)マイナンバーカードで他人の住民票を誤発行
    問題続出!マイナンバーカードのコンビニ証明書交付サービス

 
金融庁は全銀ネットへの立ち入り検査を検討しているようです。

産経新聞(2023/10/17)
全銀システム障害、全銀ネットに立ち入り検査も 鈴木金融相「国民生活への影響は遺憾」

鈴木俊一金融担当相は17日の閣議後の記者会見で、銀行間の資金決済を担う全国銀行データ通信システム(全銀システム)で10~11日に生じた障害を巡り、運営する全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)に対して「立ち入り検査を含めた対応方針を必要に応じて考える」と語り、厳正に対処する意向を示した。

全銀システムの運営者である全銀ネットの責任は免れないとは思いますが、おそらく問題の根本原因はシステムを受注したNTTデータとその先ではないでしょうか。

よく言われるIT業界の多重下請け構造です。

東洋経済(2023/3/5)
徹底図解 もうけの仕組み100


 
業界は元請け(1次請け)から2次請け、3次請けといったゼネコンのような多層構造で、下流に行くほどマージンが抜かれ採算性は低い。

上位のベンダーは仕様を決めるだけで、ソフトウェアの詳細設計や実装はさらに下請けに回すというのはよく聞きます。
下位に行けば行くほど、単価が安く、面白くない仕事が多く、優秀な人はいなくなります。
上位のベンダーが品質を的確に確認できればいいですが、下請けに丸投げばかりしてきたので、そんな能力はありません。
ソフトウェアの品質が低下するのは当然です。

 
ちなみに、こんな話もあるようです。

DIAMOND online (2021/8/11)
NTTデータ・NECが震撼、日本のソフト開発費が「安過ぎ」て海外下請けが脱走

「ITゼネコン」とやゆされ、ピラミッド型の下請け構造を抱える日本のソフトウエア開発業界。このピラミッドの下層は、中国の低コストな開発会社が支えていた。それが近年、日本の安さに嫌気が差して逃げ出しているという。

大連は1990年代から、日本企業を顧客とするオフショア開発を中核産業としてきた。NTTデータやNEC、日立ソフトウェアエンジニアリング(現日立ソリューションズ)といった、日本の大手企業を「お得意さま」とし、中国の大都市の中でもひときわ、日本とつながりが深い。日本語をよく理解し、日本企業の要望に応えられる開発企業やエンジニアが多いことで知られている。
ところがその大連で近年、日本企業との取引を敬遠する動きが広がっている。これはNTTデータやNECといった企業にとって、さらには日本のIT業界全体にとって、由々しき事態である。

水産物を中国に買い負けるという話はよく聞きますが、ソフト開発は発注負けしているようです。

「安い日本」の影響は計り知れません。

日本のITインフラ、大丈夫でしょうか・・