日本の死亡者数に異変が起きている(その5)

先日のブログ
日本の死亡者数に異変が起きている(その4)
の続編です。

厚生労働省から2021年9月の人口動態統計速報 が公表されたので、グラフを作成してみました。


 
赤線が2021年の月別の死亡者数で、それから新型コロナによる死亡者数を引いたものが青線です。

4月以降、昨年以前より多い状態が続いています。

先日のブログと同様、9月の65歳以上人口に対する死亡者数の割合(死亡率)の推移をグラフにすると、以下のようになります。
死亡率=(月別死亡者数/65歳以上人口)×100(%)


(人口データ:総務省統計局 過去の各月1日現在人口

9月の死亡率も今年は非常に高い状態になっています。
今年の9月は新型コロナの死亡者数も比較的多い月なので、その影響も少しはあったかもしれませんが、それだけではないような気がします。


(データ元:厚生労働省 報道発表資料

月間の死亡者数の12カ月平均をグラフにすると、2021年は激増といってもいい状況です。


 
特に5月以降、増加速度が増しています。


 

感染研の集計によると、今年の1~8月の全国の超過死亡数は、7952~42710人だそうです。


第60回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(R3/11/25)資料3-2 鈴木先生提出資料

この超過死亡の原因が何かが知りたいのですが・・
 

今日、ちょっと気になったニュースがありました。

日本経済新聞(2021/11/26)
がん診断6万件少なく 20年、コロナで検診・受診減影響

国立がん研究センターは26日、2020年にがんと診断された登録数が19年より約6万件減少したと発表した。集計を始めた07年以降、登録数が減少するのは初めて。
自覚症状の少ない初期段階の患者が大幅に減った。新型コロナウイルスの流行で検診や受診が減った影響とみられる。同センターは「適切なタイミングで受診してほしい」と訴えている。
同センターは全国のがん診療連携拠点病院などで、がんと診断後に患者情報を登録する「院内がん登録」を集計した。ごく初期の上皮内がんを含め20年にがん登録されたのは863施設で計約104万件。全国の新規患者の7割以上をカバーしているという。

2020年のがんで亡くなった人のデータは以下のようになっています。

死因別死亡者数(抜粋)(令和1~2年、年間累計)

人口動態統計月報(概数)(令和2年12月分)

2020年(令和2年)は、令和元年と比較して年間で1600人ほど増えていますが、検診との関係はあるのでしょうか?

2021年1~6月のがんの死亡者数は、2020年の同時期より1000人ほど増えています。
残りの半年分を考えると、今年は去年よりさらに増える可能性がありそうです。
とは言え、今年の超過死亡数と比べると、大した人数ではなさそうですが。

死因別死亡者数(抜粋)(令和2~3年、1~6月累計)

人口動態統計月報(概数)(令和3年6月分)

 
がん以外の死因についても見てみました。

死因別死亡者数(抜粋)(令和1~2年、1~6月累計)

人口動態統計月報(概数)(令和2年6月分)

死因別死亡者数(抜粋)(令和2~3年、1~6月累計)

人口動態統計月報(概数)(令和3年6月分)

1月~6月死亡総数
令和元年:697654
令和2年:681968(元年-15686)
令和3年:719748(元年+22094、2年+37780)

循環器系の疾患
令和元年:182470
令和2年:175030(元年-7440)
令和3年:182481(元年-11、2年+7451)

症状、微候及び異常臨床所見・異常検査所見で他に分類されないもの
令和元年:71611
令和2年:75953(元年+4342)
令和3年:86505(元年+14894、2年+10552)

疾病及び死亡の外因
令和元年:34339
令和2年:31704(元年-2635)
令和3年:34089(元年-250、2年+2385)

特殊目的用コード(新型コロナ陽性者)
令和元年:なし
令和2年:911
令和3年:12283(2年+11372)

令和2年は極端に死亡者数が少なかったので、その反動が令和3年に起きている可能性があります。
「循環器系の疾患」や「疾病及び死亡の外因」がまさにその例で、令和元年と3年を比べるとほぼ同じ人数です。

令和元年と3年を比較して死亡者数が大きく増えているのは、
「症状、微候及び異常臨床所見・異常検査所見で他に分類されないもの」
です。

症状、微候及び異常臨床所見・異常検査所見で他に分類されないもの
老衰
 令和元年:59239
 令和2年:63926(元年+4687)
 令和3年:73299(元年+14060、2年+9373)

その他の症状、微候及び異常臨床所見・異常検査所見で他に分類されないもの
 令和元年:12318
 令和2年:11986(元年-332)
 令和3年:13172(元年+854、2年+1186)

この分類は、厚労省の資料 によると以下のように定義されています。

症状、徴候及び異常臨床所見・異常検査所見で他に分類されないもの(R00-R99)
(a)その症例に関するあらゆる事実を調査したにもかかわらず、それ以上明確な診断を下せなかったもの
(b)初診当時に存在した徴候又は症状が、一過性のもので、その原因を決定できなかったもの
(c)その後の観察又は治療を受けるための来院がなかったため仮に診断されたもの
(d)診断が下される前に観察又は治療のため他所へまわされたもの
(e)その他の何らかの理由によって、さらに詳細な診断が下されなかったもの
(f)追加情報が与えられるてはいるが、それ自体医療上重要な問題を意味する症状

要するに、ちゃんと調査していないとか、よく分からない場合がこの分類になるようです。

この分類の大部分は「老衰」ですが、ある程度の高齢で、
「朝、起きてこないので、見に行ったら息をしていなかった」
といったような場合は、特に思い当たる原因がなければ、ほとんどが「老衰」になるのではないでしょうか。

そして、高齢者でなく死因がよく分からない場合は、この分類の「その他の症状・・・」になるのだと思います。
これが令和3年に急増しているのは気になります。

 
どうやら、超過死亡増加の原因は、
「症状、微候及び異常臨床所見・異常検査所見で他に分類されないもの」
にありそうな気がします。

やはりこれは、最近よく聞く、
「評価不能」
の死亡が増えているということでしょうか・・
 

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