リニア中央新幹線から発生する磁界の影響

何となく気になったので、少し調べてみました。

リニア中央新幹線は、車体を浮上させて前進するために超電導磁石を使用します。


 

 

 

リニア中央新幹線

車両のスピードに応じて「推進コイル」のN極とS極を切り替えることによって、車両が前進する仕組みです。

JR東海のサイトにある資料によると、車両が時速500kmで通過した場合、通過地点の磁界の強さは約6Hzの周波数で変化するそうです。


磁界の影響

この資料では「健康への影響はない」と断言しています。




磁界の影響


JEIC電磁界情報センター

これらの測定結果は、山梨リニア実験線の実測値で、JR東海が公表しているものです。

全て「ICNIRPのガイドライン値」より低いから問題ないということですが・・

 
ICNIRPのStatic Fields(静磁場)のガイドライン には、このような記載があります。


(DeepL翻訳)
ICNIRPは、間接的な悪影響の可能性から、強磁性体を含む電子医療機器やインプラントを埋め込んだ人の不注意による有害な被ばくや、飛来物による危険を防止するために、0.5mTのようなはるかに低い制限レベルにつながる実践的な政策を実施する必要があると認識している。

WHOのファクトシート にも同様の記述がありますが、ペースメーカーのような磁界の影響を受ける可能性のある機器は注意した方がよさそうです。

静的な電界および磁界
静磁界は、体内ペースメーカのような植え込み型金属製装置に影響を及ぼしますが、これは健康への直接的な悪影響となる可能性があります。心臓ペースメーカ、強磁性インプラント、植え込み型電子装置の装着者は静磁界が 0.5 ミリテスラを上回る場所を避けるのがよいと言われています。また、3 ミリテスラを上回る静磁界中では、磁石の引力で突然動き出した物体によって傷害を受けることがないよう注意しましょう。

低周波(LF)の磁界の影響については、ICNIRPのサイト にこのように記載されています。

現在存在する科学的証拠は、LF への長期曝露が小児白血病の原因であるという結論には至っていません。 LF 曝露による成人のがんの証拠は非常に弱いです。 LF 曝露とパーキンソン病、多発性硬化症、発育および生殖への影響、心血管疾患との関連についての実質的な科学的証拠はありませんが、アルツハイマー病と筋萎縮性側索硬化症については証拠が決定的ではありません。症状、睡眠の質、認知機能に関する研究では、この種の曝露による影響についての一貫した証拠は得られていません。
全体的な研究では、これまでのところ、長期にわたる低レベルの LF 曝露が健康に悪影響を与えることは示されていません。

あくまでも「これまでのところ」ですが、健康に悪影響を与えることは示されていないということです。

 
一方、車両内で必要な電力は「誘導集電方式」で供給することになっています。

乗りものニュース(2020/3/25)
超電導リニアL0系 スマホ同様に電気を得る「誘導集電」全面対応の改良型試験車が登場

このたび登場したL0系改良型試験車は、車両の底面と地上に電磁コイルを設置した「誘導集電方式」を全面的に採用。地上のコイルに電気を流すと、磁界の変化により車両側のコイルにも電気が発生するという仕組みで(電磁誘導作用)、スマートフォンなどを置くだけで充電できる仕組みと同様の理屈になります。


 
2027年の品川~名古屋間開業が予定されているリニア中央新幹線では、この誘導集電方式が全面的に採用されます。

応用物理学会(2022/6/10)
超電導リニアと中央新幹線

非接触給電システム
山梨実験線では車上の電源としてガスタービン発電機を用いてきたが,営業線に向けて環境負荷の小さい非接触・誘導集電システムを開発・導入した。
すべての車両に集電装置が設備され,日々の運転に供されている.周波数は10 kHz未満,一両あたり75 kW供給可能で,最大電力は営業編成16両では1,200 kWとなる.実験線では12両編成により550 km/hまでの安定動作を確認している.
非接触・誘導集電システムから発生する磁界は,解釈基準で定められた国際規格であるIEC/TS62597に準拠して測定を行い,ICNIRP2010ガイドラインの1%以下であることが確認されたている.また,電磁的エミッションは同規格であるIEC62236-2に適合している.

16両で1.2メガワットだそうです。
けっして小さくない電力だと思いますが、これもICNIRPのガイドラインを満たしているようです。
でも、それなりにノイズは出るのではないでしょうか。
人体には問題がなくても、スマホとか電子機器はどうなのでしょう?

 
とりあえず、リニア中央新幹線から発生する磁界は、ICNIRPのガイドラインを満たしているということです。
現時点では、それ以上のことは言えないと思います。
ただし、ペースメーカーのような磁界の影響を受ける可能性のある機器の使用や持ち込みには注意したほうがよさそうです。

 
余談ですが、何100kmもコイルを敷き詰める必要のあるリニアって、維持管理が結構大変そうな気がします。
線路に敷設するコイルの数が全部で何万個になるのか知りませんが、1個でも不具合があったら運転停止でしょうか?
最高速度は時速500kmでも、不具合で止まってばかりだったら、どうしようもありません。
あまり批判はしたくないですが、リニアのコスパはちょっと気になります・・