消費税にまつわる国家的デマ「消費税は預かり金」の大ウソ(その2)

預かり金デマの流布は相変わらず続いているようです。


国税庁 消費税のしくみ

消費税は、商品・製品の販売やサービスの提供などの取引に対して広く公平に課税される税で、消費者が負担し事業者が納付します。

これを見た多くの人は、消費者が払った消費税は事業者が預かると思うのではないでしょうか。

こちらははっきり書いてあります。


東京商工会議所

一般消費者がパンを買う際に支払った消費税は、パン屋が預かり納付します。

 
この「預かり金デマ」のタチの悪い所は、会計の専門家でも騙されている場合があるということです。

長周新聞(2023/6/29)
インボイス制度の問題点と消費税の欺瞞――ウソにまみれた消費税の闇―― 前衆議院議員・税理士 安藤裕

消費税を預かり金であると誤認させる仕掛け
消費税が預り金である、と会計の専門家ですら誤認させる大きな仕掛けが二つある。一つは企業会計における税抜き経理方式、もう一つはレシート問題である。


国税庁 No.6375 税抜経理方式又は税込経理方式による経理処理

消費税の経理のやり方は、税抜経理方式と税込経理方式のどちらでもよいことになっています。
そして税抜経理方式は、消費税を預かり金として計算する方法です。
これはあくまでも経理上の話なのですが、専門家でも「消費税は預かり金」と思ってしまう理由がこの「税抜経理方式」にあるようです。

 
以下はたまたま見つけた資料ですが、消費税法の欠陥が指摘されています。

消費税の転嫁に関する一考察

所得税、法人税と共に21世紀の基幹税となるべき消費税は、導入後20年が経過しているにもかかわらず、依然、様々な法の不備が指摘されており、特に、転嫁については、消費税法上、法規制が一切ない。

消費税を適正に転嫁できないような課税構造であるにもかかわらず、最終負担者の消費者に転嫁できなかった場合でも消費税法に規定されている納付金額の計算方法に従い消費税を納付しなければならない

消費税法においては、納税義務者である事業者の負担すべき消費税が適正に転嫁されることを予定はしているものの、法的な意味において、事業者には、転嫁の権利(転嫁できなかった消費税分の返還を取引先に請求する権利)及び、転嫁の義務(消費税の転嫁義務を果たさないことを理由とする制裁措置)はない。

今の消費税法には、販売価格に消費税を転嫁する法規制がないということです。
消費税を消費者に転嫁できてもできなくても、事業者は消費税を納付しなければなりません。
にもかかわらず、事業者には消費税を適正に転嫁する権利も義務もありません。

もし、消費税を預り金と捉えるのならば、ゴルフ場利用税のように「消費者に消費税を課する。事業者を消費税の特別徴収義務者と指定し、これに消費税を徴収させなければならない。」という条文構成でなくてはならないが、無論、預り金ではない。

では、消費税は預り金的な性格を有しているのか、それとも価格の一部と解釈するかについて、以下に列挙する5つの裁判例を含む多くの裁判の判決は、消費税相当額を「価格の一部」と解釈している。

平成2年3月26日判決 東京地方裁判所
事件番号:平成1年(ワ)第5194号
消費者が事業者に対して支払う消費税分はあくまで商品や役務の提供に対する対価の一部としての性格しか有しないから、事業者が当該消費税分につき過不足なく国庫に納付する義務を、消費者に対する関係で負うものではない。

平成9年7月14日判決 神戸地裁
事件番号:平成7年(オ)第947号
消費税の転嫁に関して、税制改革法が「事業者は、消費税を消費者に転嫁するものとする」と定めているのみで、税制改革法はもとより消費税法においても、事業者に消費税の転嫁義務を課した規定はなく、また、転嫁するとしても、それをいつからとするかについての定めも置いていない。

平成14年4月18日判決 東京地裁
事件番号:平成12年(行ウ)第243号、平成13年(行ウ)第388号
課税対象となる取引については、個々の取引において事業者と消費者との間で消費税相当額の負担についていかなる合意があったか、また、その合意に基づく現金が現に支払われたか否かにかかわらず、事業者においては消費税の納税義務を免れることはできない。

 
これは中小企業庁が消費税が8%になる時に作成したパンフレットで、便乗値上げに当たらないケースの例です。


中小企業庁 消費税の手引き

電車の運賃などがこの方法だと思いますが、事業全体で適正な転嫁であれば、お客さんによって消費税率を変えてもいいということです。
もし消費税が預かり金だったら、明らかに不公平だと思います。

これは免税事業者でも消費税を転嫁していいという例です。


中小企業庁 消費税の手引き

 
改めて分かったのは、消費税は預かり金ではないだけでなく、販売価格に転嫁するための具体的な法規制もないということです。(注)
 
もし消費税が預かり金だったら、事業者は何の法的根拠もなく他人のお金を預かっていることになります。

それに、そもそも、消費者が消費税を払う法的根拠はあるのでしょうか?
消費者が消費税の支払いを拒否しても違法ではない?
どんどん疑問が深まってきます。

預かり金デマの流布はいつまで続くのでしょうか・・

 
(注)消費税率が8%と10%に上がる時に施行された転嫁拒否と価格表示に関する「消費税転嫁対策特別措置法」は、一部現在も効力が継続しています。

 
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