消費税にまつわる国家的デマ「消費税は預かり金」の大ウソ(その8)

「消費税」というお金の性格について、消費税導入前に国会で議論されていたようです。

第113回国会 参議院 税制問題等に関する調査特別委員会 第11号 昭和63年12月14日

073・安恒良一
そこで今度は、消費者が業者に支払った消費税という金の性格は、総理、どういうふうに理解したらいいでしょうか。

074・水野勝
これは、消費者からお預かりし国に納める、いわば一種の預かり金的な、強いて言えばそういう性質のものになろうかと思うわけでございます。

075・安恒良一
総理に聞いているんですがね。この金の性格で最も大切なことは、公金なのか、それとも一般に言われている業者の売上金なのですか、この点どちらですか。消費者が払ったお金は公金、公の金なのか、それとも一般に言われる業者の売上金なのですか、どちらですか。その点だけはっきりしてください。

076・水野勝
納付されればこれは公金でございますけれども、仮受けとして経理されるこれは普通の預かり金であり、公金ではない仮受金に属するものではないかと思います。

077・安恒良一
そんなばかな話ないじゃないですか。納付されればというのは、私が品物を買いに行ったらレジで払っちゃうんですよ。払ったことは納付じゃないですか、消費者の立場で言うと。
ですから、消費者の立場から言いますと、私は税金として、消費税として払ったんですから、これは正真正銘の公金であることは間違いないんじゃないですか、総理。あんな預かり金というのはどういうことなんですか。消費者は物を買った途端に三%払う。これは消費税として払っているんですから公の金でしょう。この点どうですか、総理。

078・竹下登
これは恐らく、今話を聞きながら、私も詳しくはございませんが、商法上の定義の中へ入っていくのかなと思いましたが、私もちっぽけな酒の製造業者でございます。したがって私どもは、やっぱりこれは売上金であって、そしてこれは庫出税でございますから、お納めしたときに公金になるというふうな理解の仕方で、これは私の経験だけで申しわけありません。

079・安恒良一
私は納得しません、このことは。少なくとも私が物を、洋服なら洋服を買って代金を支払ったときに消費税が三%含まれておれば、それは消費税そのものを払ったわけです。私は預かり金を業者に預けることはないんですよ。その分、払った途端、私たちは税金を納めている。ですから、公金であることはこれは間違いないんです。私はこの点は、今言われたように、この法律はそこがあいまいになっているんですよ、この法律の欠点は。そのことがあいまいになっています。私は承知した上で聞いているんです。この法律の欠点は、そこが非常にあいまいなんです。公金なのかどうなのかというのが、この法律では非常にあいまいだ。私は公金だと。
そこで、次のことをお聞きしておきます。
この点を明らかにしておきたいんですが、消費税の課税期間は原則一年、そして申告納付は課税期間終了後二カ月以内。そこで起こり得ることは、消費者から預かった消費税は、最も長い場合には十四カ月消費税が業者に預けられるようですが、私から言わせると、相当の期間、公金が業者の金庫に塩漬けになるということはいかがなものでしょうか。相当の期間、私から言わせると、私たちが納めたお金が業者の金庫に塩漬けになっている。長い場合には十四カ月これはできるわけですからね。それは早く納めようと思えば納められますよ。しかし、十四カ月できるんです。こういう点はいかがなものでしょうか、総理。

080・竹下登
経験的な話だけしかできません。まず、それだけはお断りしておきますが、私自身庫出税の納税義務者たる酒造業者でございますが、売上金がありまして、そして納付したらこれは公金になって、その間は性格的に言えば売上高の一部がいわば預かり金という形になっておって、それらが納期の間までにはいろいろ事業会計の中へ運用されていくというのが間接税の持つ一般的なことではないかなと。ちょっと経験だけで申し上げて申しわけありません。

081・安恒良一
それじゃ総理、あなた盛んに庫出税ばかり言われますから、資料を見てください、この資料を。(資料を示す)資料の一番最後に、「現行間接税等の納付期間」というものを私は出しています。今私が言ったように長いのがありますか。ここにずっと、例えば酒税、「製造所から移出した日の属する月の末日から二月以内」と、こうなっていますよ。その他全部このようにあって、今私が言っているように、一年も十何カ月も、いわゆるそういう間接税が今ありますか。日本の今の税法をこれは全部洗ってみました。例えば、私たちサラリーマンの給与所得、これは徴収月の属する日の翌月の十日と、こういうふうになっていますね、これは。こういう状況です。
それから次に、資料を見てください。私はこの資料を大蔵省に計算をさせたのであります。私の計算の仮定は、一ページに仮定を置いてあります。この計算をさせました。そうしますと、この預かった金がどういうことになるのか、トヨタ自動車の場合、東芝の場合等々、各業種のトップから十位について、ここにはそれを抽出して持ってきました。例えば今言った今回の税制を、ここに書いておきますような九十日の場合には譲渡性預金の金利により計算しました。すべてこれは読み上げませんが、計算方法はこの一ページに書いてあります。
これで見ていただきますと、この預かり金というものはこれだけの莫大な金額になるんです。例えば六十三年ですが、トヨタ自動車の場合でいきますと七十一億八千七百万、東芝の場合でいきますと三十二億九千百万、そして六十四年、六十五年というふうにだんだんこれが非常に大きくなっていくわけであります。
でありますから、取られる方は公金として納める。しかしながら、あなたたちはそこのところを答弁をあいまいにする。預かり金だから銀行預金してもいいし、場合によればそれで株を買ってもいいしと、金には色目がついていませんから。そうすると、これは大企業ほど預かり金は非常に大きい金額になるんですよ。そして中小零細企業は預かり金が少ない、もしくは自分の利益を相殺してでも払わなきゃならない。この制度というのは、全くこういう大きな矛盾をはらんでいる。
こういう点について、この資料を見て総理、どのようにお考えになりますか。これは日本の全産業をやったんです。その中で御参考のためにと思って一部抽出をしてきました。全業種をやりました。全業種を、日本の。預かり金の運用を私はこれは定期金利で回しただけです。回しただけでもこんなに、しかもそれは消費税が進行するに従って年次ごとに大企業と中小企業の間にこれが大きくなっていく。こういう現実があるんですが、この点はどのように考え、どのようにされるつもりですか。ほかの税制にはなかったことなんですからね。間接税だからほかにあるあると言っていたが、ほかの方はここにちゃんと証拠を出してあるんですからね。これだけは今言ったようなことになる。こういう大変な矛盾、大資本擁護といいますか、大企業擁護ということにこれはなりますよ。どうですか、その点。

082・竹下登
初めから専門家の知恵をかりなきゃ完全なお答えはできませんが、私このことは聞いておりました。実は予算委員会のときに、安恒委員に私、若干時間をかけて朗読しました点についてかなりの時間を費した。ところが、今度のこの資料は大蔵省始まって以来の作業をして、実は御協力  御協力申し上げたと言うと当たり前のことだとおっしゃいますが、国政調査権に協力したというつもりなんです、私自身。よくここまでできたものだなと思います。しかも、これを簡易納税方式の計算でもいいとか、そういうようなある種の許容限度も与えていただいたというふうに承っております。
だから、今おっしゃった問題点はあり得る。間接税というものが納付期間までの間、売上高の中に含まれる預かり金的性格を持ち、それを運用し得るということは、これは間接税というものの持つ特性、宿命
という言葉がございましたが、宿命というよりもこれは特性ではなかろうか。その場合、やっぱり大企業といえども、今、東芝とかトヨタとかいう例もございましたが、それだけの多くの企業を抱え、多くの資本家、株式所有者を持っている場合、それがあるいは給与の上乗せになり配当の上乗せになっていくという、結果としてそういうものが生じてくるというのは、これは企業経営の中には存在することではないかなと。いささか素人のお答えになりました。

083・安恒良一
全然答弁になっていませんね。いいですか、例えば東芝でもトヨタでもいわゆる給与所得源泉徴収の場合には大変な煩雑な事務がかかるんですよ。ところが、それは徴収した月の属する日の翌月の十日までに税金を納めるので、一年余りも手元にないんですよ。こっちの方だけは手元に置いてそれで株を買ったりいろんなことをしてもいい、それがそこの従業員の賃金になればいいじゃないかと。そんなばかげたことないですよ。税の徴収の方法というのをきょう私はここに出しているんです。手数をかけるのは片っ方の方が余計かけますよ、今申し上げたように。たとえ同じにしても、片っ方の方は取ったらすぐ翌月の十日までに持ってこいよ、片っ方の方は一年以上ほったらかしておっていいよ、その間で運用でもうけるならもうけなさいと。これじゃ納めた国民はたまらぬですよ、納めた国民は。
消費税というのはそこの従業員だけが払うわけじゃないんだから、東芝の製品を買うのは一般の国民が買うんですよ。自動車を買うのは一般の国民が買うんですよ。買って自分の納めた消費税というのはその企業のもとに一年有余置かれて、それがあなた利殖に使われる、これは間接税が持つ宿命だからしようがないじゃないかと。それであなた納得しますか、それで。そういうことで本当にあなたは全国の納税者を納得させられるか。私は、この点についてはそんなばかなことは許せないと思います。どうしても今ここであれができなければ、この法案審議の最中に、どうしたら今言ったことをお金を払った消費者に納得させられるかという考え方なり資料を総理、まだこの論議が続きますから、出してもらいたい。
今あなたの言われたことだけでは全然納得しませんよ。全然納得しません。ほかのあれは今言ったように少なくとも二カ月とか、こういうふうになっているわけですからね。一番大きな手間取るのは給与所得ですよ。それなんかあなた、一カ月したら納めろ、こうなっているんだからね。片っ方だけは大法人の場合でもこれは間接税だからいいんだと、しかもその金額がこんなに大きいんですからね。この計算方法は間違いない。私がしたわけじゃない。私は大蔵省に協力を求めて、大蔵省は大変な作業をしたことを私は知っていますよ。しかしこういうことになる。そういう点についてはぜひ総理、私は少なくともこれが審議が終わるまでの間にどうして納得させるかというのを出してもらいたいと思いますが、どうですか。  総理に聞いているんだ、総理に。

竹下総理大臣は酒税をイメージしていたようです。
ということは、預かり金というより、コストの1部と考えた方が分かりやすいのではないでしょうか。


酒類販売管理研修モデルテキスト(令和4年4月)
 

第113回国会 参議院 税制問題等に関する調査特別委員会 第16号 昭和63年12月21日

043・安恒良一
総理、消費税は多段階課税であり、しかも前段階控除方式であるということはお互いが承知している。
そこで、例えば小売業者がその売り上げに三%の税率で計算して預かった金額は、仕入れ段階で既に支払われている控除対象の税金相当分とは同額でないんです。したがって、この場合業者の手元にお金が残ることになるんです。このことは大蔵省も認めるでしょうね、今の言い方で。そうしますと、この残りたお金は、前回私の質問で、総理の答弁では預かり金ですとあなたは言う。預かり金は業者が預かるんですが、一番長くても一年後には国庫に納めなきゃならぬ預かり金ですね。しかし、この三千万円以下の業者は、今言ったこの差額の預かり金を国庫に納める手段がないんですよ。私はこれは、そういう業者を責めているわけじゃないんですよ、そういう手段がないんですから。しかし、消費税を納めた消費者は納得しませんよ、その業者から取られているんですから。ところが、取った人は納めようと思っても納められないんですね。消費者が納めた税金が国庫に届かない、そんな消費税の計算方法を認める、税制としてはむちゃくちゃじゃないですか。矛盾があるんじゃないですか。その点、総理どうお考えになりますか。
そこで、総理が御答弁する前に、ちょっと税務当局に、きのう今言ったような預かり金の中から国庫に納付しないで済むと見込まれる金額を試算しておってくれと言っておいたその試算の金額を言ってもらってから総理の答弁を下さい。

044・水野勝
先ほどの納税者数は非常に多うございます。したがいまして、金額を合わせますとぎりぎり、じゃそれは全部お手元にという場合には二千億円ぐらいのものにはなります。しかし、それは御承知のように三%上げていいということであって、業者がどうされるか、それはその分だけサービスされるか、そこはやっぱり先ほどの御指摘のように二・四%は転嫁しなきゃそのコストはかかる、そのお手間というものも考えると、そこはあえて納めなくて結構でございますというふうに仕組んでいるところでございます。

045・安恒良一
総理、今言われたように、ざっと計算しても二千億ぐらいになるだろうと。問題は、それから先まだ計算し切ってないんです。二千億から仕入れにいった分をどれだけ引くかということです。これも知れています。
例えば、これは極端な、あなたがアバウトの論議好きだと時々言われますから、半々としましょうか、一千億と。この半々というのは全くアバウトですよ。私はそうでないように計算するように言っておったんですが、計算ができていません。そうしますと、国庫に納めない金がそれだけ業者の手元に残る。消費者は業者を不審な目で見る。消費者は、税金を納めた人の立場から見ると猫ばばされたと思いますね。片方の方は、私は自分は好きこのんでこんなものを猫ばばする気はありません、私は立派な商人ですとか立派な生産者です、こういうことになる。そんなことを白い目で見られるのは割が合わぬと、こう業者は言いますよ。これが今回の消費税の一つの大きな欠陥なんですよ、今言ったこと。今度のあなたがやろうとしている税金の大きな欠陥です。これをどういうふうに解決し、どのように考えられますか。総理のお考えを聞かしてください。

046・竹下登
三%、仮に前段階控除が二・四とすれば、〇・六に当たるものになるわけでございますが、二・四が全部がそうであるとは私ももちろん思いません。全部が〇・六であるとも思いません。これこそアバウトな議論の根底にあるわけでございますけれども、しかし、免税点というものが存在する限りにおいては今の議論はあり得ることであります。そうして、その免税業者の方々も、いわゆる前段階の問題はもとよりでございますが、帳簿にいたしましても、前段階からの仕入れ、それからいわゆる卸というものは、大量の場合と少量の場合といわゆる単品にすれば価格が違ってくる場合もございますので、それらのものは間接税の持つ、そしてなかんずく免税点のある税制というものにはこれはやむを得ない税制であろうというふうに私はお願いをしているところであります。

047・安恒良一
総理、あなたは、私と前の日の論議の中で、この消費税をやれば不公平税制の緩和に大きく役立つと、こう言われたんですよ。ところが、消費者の立場からいうと、税金を納めた人の立場ですよ、猫ばばされる危険性がある税金を納めろと言われて、これがどうして不公平の解消に役立つんですか。猫ばばされる。今あなたも言われたように、数字なら具体的数字を言ってもらいたいが、試算し切ってないんだから、これは。かなり残ることは間違いないんですよ、三千万円以下の業者は、三%かけて取る場合。そうでしょう。ですから、そんなことでどうして国民が、これで不公平が直るというふうに信じるとあなたがおっしゃっても信ずることができるんでしょうか。私は本当にこれは欠陥法案だと思います。
総理、その点と、こんな欠陥法案を強引に適用して事故が起こりませんか。以上、お答えください。

048・竹下登
間接税制の中で免税点問題が存在しておるときには、これは本来今の議論はエンドレスにあり得る問題である。それぞれの事業者の方はすべてが、再販価格制度等は別といたしまして、公定価格ではございませんから、それらがいろんな形で最終消費者の方に渡るときには、この三%というのがいろんな形においてあり得るだろうということは私も十分想像できます。だから、それらのことは本来含まれた税制であるということは、やはり国民の皆さん方に理解を得なければならないことだと思っております。

049・安恒良一
何回も言いますがね、あなたは、どうしても一億納税者になる、そういう方に対する配慮があなたの言葉に本当にないんです。消費税だからしようがない、そんな仕組みは、猫ばばがあろうと何があろうとしようがないとあなたの言葉は聞こえるんですよ。私は、一国の総理としていま少し説明の方法があると思いますよ、率直に言わしてもらって。あなたのお話を聞いていると、宿命だ宿命だ、消費税というものはそういうものも持っているんだ、免税点をつくればしようがないじゃないかと。しようがないじゃないかといっても、取られる人は取られているんですからね。それが中間で猫ばばされてどこへ行くかわからないんですよ。国庫に入るなら慰めがあるんですよ。国庫に入らないんですからね。それなのに、しようがないじゃないか、国民理解をしろ、納得しろと言っても、なかなか国民は理解も納得もできません。このことをはっきり言っておきます。

どうやら、欠陥法案であることを承知の上で、消費税法を成立させたようです。
それが35年経った今でも、そのまま受け継がれているということだと思います。

 
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