新型コロナワクチン「メリットはリスクを上回る」は本当か?

アストラゼネカワクチンの血栓問題は、予想通り「メリットはリスクを上回る」ということで接種を再開するようです。

NHK NEWS WEB (2021/3/17)
アストラゼネカ製ワクチン EU当局「メリットはリスク上回る」

アストラゼネカなどが開発した新型コロナウイルスワクチンの接種後に血栓が確認されたことなどを受けて、調査を行っているEU=ヨーロッパ連合の医薬品規制当局は、18日に予定している調査結果の公表を前に記者会見し「接種によるメリットはリスクを上回る」という現段階での見方を改めて示しました。

EUROPEAN MEDICINES AGENCY (EMA)の発表

COVID-19 Vaccine AstraZeneca: benefits still outweigh the risks despite possible link to rare blood clots with low blood platelets
(Google翻訳)
COVID-19ワクチンアストラゼネカ:血小板の少ないまれな血栓との関連の可能性があるにもかかわらず、利益は依然としてリスクを上回っています

These are rare cases  around 20 million people in the UK and EEA had received the vaccine as of March 16 and EMA had reviewed only 7 cases of blood clots in multiple blood vessels (disseminated intravascular coagulation, DIC) and 18 cases of CVST. A causal link with the vaccine is not proven, but is possible and deserves further analysis.
(Google翻訳)
これらはまれなケースです。英国とEEAでは3月16日時点で約2,000万人がワクチンを接種しており、EMAは複数の血管の血栓(播種性血管内凝固症候群、DIC)の7例とCVSTの18例のみをレビューしました。ワクチンとの因果関係は証明されていませんが、可能であり、さらに分析する価値があります。

因果関係が良く分からないからもう少し調べたほうがいいけど、100万分の1程度のまれなケースなので、リスクよりメリットの方が大きい事は変わりません。
という感じでしょうか。

ただし、気になる記述もあります。
調査対象の死亡した9人に関して、

Most of these occurred in people under 55 and the majority were women.
(Google翻訳)
これらのほとんどは55歳未満の人々で発生し、大多数は女性でした。

アナフィラキシーの副反応もほとんどが女性で発症しているようですが、ちょっと気になります。

 
結局のところ、

「この程度の確率なら起きてもしょうがないし、リスクよりベネフィットの方が大きい」

ということのようですが、一概にそう言えるのかは非常に疑問です。

EMA(欧州医薬品庁)もEU連合の機関なので、ワクチンを接種させたい派だと思います。
政治的な意図や忖度が働いている可能性があります。

 
ワクチンの「リスク」と「ベネフィット」について、厚労省の資料にこのように書かれています。


厚生科学審議会資料「ワクチンの副反応に対する考え方及び評価について」

「ワクチンの接種に当たっては、ワクチンの特性に加え、接種対象となる者の年齢や医学的な背景等を踏まえた新型コロナウィルス感染によるリスクを勘案し、総合的に接種の判断をすることが必要」

つまり、ワクチンのリスクやベネフィットは、年齢や環境等によって異なる。
ということです。

 
新型コロナワクチンの接種によって得られる最大の「ベネフィット」は、重症化を予防できることだと思いますが、重症化のリスクは年齢によってかなり差があります。


新型コロナウイルス感染症の国内発生動向(速報値)(令和3年1月20日18時)

これは日本の第3波の入院者数がピーク付近の時期のデータですが、新型コロナに感染して入院治療が必要になった人の重症化率は、

10代は0
20代は約1万分の1
30代は約7千分の1
40代は約400分の1
50代は約150分の1
60代は約50分の1
70代は約30分の1

という状況です。
20代と70代で重症化率は300倍も違います。
つまり、20代の人のワクチンによるベネフィットは、70代の人の300分の1しかないことになります。

 
日本で新型コロナに感染して入院治療が必要になる確率は、


厚労省 国内の発生状況(令和3年3月19日0:00現在)

日本の陽性者数の累計が1年で約45万人なので、
日本の人口を1億2500万人とすると、
45万人/12500万人=約280人に1人
入院していない人を除くと、ざっくり1年で300~400人に1人程度だと思います。

東京都に限ると、
陽性者数の累計は1年で約12万人なので、
12万人/1400万人=約120人に1人
です。

日本国内で新型コロナに感染して入院が必要になる確率は、1年間で100~400人に1人程度と考えられます。

感染リスクは、職場環境や生活環境などによってもかなり違うと思われるので、人によってはこの10倍ということもあるかもしれませんが、とりあえず100人に1人だとすると、
20代の人が新型コロナに感染して重症化する確率は、
100万分の1
です。

これは前述のアストラゼネカワクチンの血栓の発症率とほぼ同じです。
また、代表的なワクチンの副反応のギランバレー症候群も100万分の1です。


厚生科学審議会資料「ワクチンの副反応に対する考え方及び評価について」

日本では、特に30代以下の若い人の新型コロナワクチンの接種は、
ベネフィットよりリスクの方が大きい
可能性があるかもしれません。

中長期の未知の副反応の可能性も考えると、さらにリスクは高まる方向になります。

もし、ワクチンで集団免疫が獲得できるのであれば、社会的なベネフィットが大きくなるので、若者も接種する意義が出てきますが、今はまだ分かりません。
数か月後の欧米の状況で答えが出てくるのでしょうか。

ウイルスの変異で若者の重症化率が上がるようなことがあれば、ベネフィットが上がる可能性はありますが、逆にワクチンの有効性が下がる可能性もあるので、何とも言えません。

あとは、感染予防効果で他人に感染させないとか、後遺症が防げるといった効果が期待できるかもしれませんが、現時点ではリスク評価は難しそうです。

 
メディアでは度々、専門家が出てきて、
「新型コロナワクチンのメリットはリスクよりはるかに大きい」
という話をしていますが、リスクやメリットは人によって違うはずです。

条件を何も言わず、全ての人に大きなメリットがあるような言い方は、誇大広告ではないでしょうか?