東京オリンピックの開催都市契約は驚愕の不平等契約になっている

延期か中止か予定通りか、先行きが全く分からなくなっている東京オリンピック・パラリンピックですが、開催都市契約を見ると、何となく納得できるような気がします。

東京都、公益財団法人日本オリンピック委員会(JOC)、国際オリンピック委員会(IOC)の3者で締結した契約書が東京オリンピック・パラリンピック準備局のホームページで公開されています。

開催都市契約2020

開催都市契約2020
   

まず、基本原則はこうです。
 
9.IOCに対する請求の補償と権利放棄
(一部抜粋・要約)

開催都市、JOC、大会組織委員会は、IOCとIOCの子会社、その他IOC関係者を、
IOCが被るすべての損害、申し立て、訴訟、損失、費用、支出、および/またはあらゆる性質の責任から、
常に補償し、防御し、かつ害が及ばないようにし、また免責する。

開催都市、JOC、大会組織委員会は、IOCおよびIOC関係者に対するすべての本件申し立てを放棄する。

IOCまたはIOCの関係者が損害を受けたり、訴えられたりした時は、開催都市とその国が全責任を負うことになっています。
そして、一切異議を唱えることはできません。
 

解除に関する条件はこうなっています。

66.契約の解除
(一部抜粋・要約)

IOCは、以下のいずれかに該当する場合、本契約を解除して、開催都市における本大会を中止する権利を有する。
i) 戦争状態、内乱、ボイコット、国際社会によって定められた禁輸措置の対象、または交戦の一種として公式に認められる状況にある場合、またはIOCがその単独の裁量で、本大会参加者の安全が理由の如何を問わず深刻に脅かされると信じるに足る合理的な根拠がある場合。
iii)本大会が2020年中に開催されない場合。

理由の如何を問わずIOCによる大会の中止またはIOCによる本契約の解除が生じた場合、開催都市、JOCおよび大会組織委員会は、
ここにいかなる形態の補償、損害賠償またはその他の賠償またはいかならう種類の救済に対する請求および権利を放棄し、
また、ここに、当該中止または解除に関するいかなる第三者からの請求、訴訟、または判断からIOC被賠償者を補償し、無害に保つものとする。

大会を中止する権利はIOCにありますが、大会が中止になった時は、開催都市/開催国には一切の補償はなく、第三者からの請求は開催都市/開催国が補償することになっています。
 

その他、このような項目があります。

71.予測できない、または不当な困難
(一部抜粋・要約)

本契約の締結日には予見できなかった不当な困難が生じた場合、
大会組織委員会はその状況において合理的な変更を考慮するようにIOCに要求できる。
ただし、当該変更が本大会またはIOCに悪影響を与えず、IOCの裁量に委ねられることを条件とする。
IOCは当該変更に考慮、同意または対応する義務を負わない。

想定外の困難が生じた時は、IOCに変更を要求することはできますが、IOCが応じるかどうかはIOCの裁量次第です。
 

公開されている開催都市契約の日本語訳しか見ていませんが、何かトラブルがあった場合は、すべて開催都市/開催国が補償することになっているようです。
しかも補償の上限もなさそうです。
こんな一方的で不平等な契約をよくサインしたものだと思いますが、それがオリンピックというものでしょうか・・

この条件を見ると、森さんも小池さんもJOCも、安易な事が言えないのは納得できます。
おそらく現在、水面下でIOCと交渉をしている可能性が高いと思いますが、ある程度話がまとまらないと、何も言えないと思います。

下手をすると、日本が莫大な費用を負担させられる可能性のある開催都市契約ですが、一応保険の項目があります。

60.保険

大会組織委員会は本大会の開会式前の十分に余裕をもった期間、および閉会式後の合理的な期間、本大会の計画、組織、財務、運営にかかわるすべてのリスクを補償対象とする適切な保険を、自己負担で確保し維持するものとする。

保険ですべてカバーできるのであれば、日本は強気でIOCと交渉できるかもしれませんが、はたしてどうでしょう?
 

日本が一方的に損害を被るようなことがないことを願うばかりです。
でも、もしそんな事になったら、もうオリンピックを開催する国はなくなってしまうでしょう。
ただでさえ莫大な金食い虫のオリンピックです。
IOCも分かっているとは思いますが。