新型コロナの水際対策、強化してもザル状態は変わらない

政府は世論に押されて水際対策の強化をするようですが、これで変異ウイルスを阻止できるのでしょうか。

産経新聞(2021/1/8)
全入国者にPCR検査 緊急事態宣言解除まで水際対策強化

政府は8日、日本人を含む海外からの渡航者が日本に入国する際、全員にPCR検査を義務付けると発表した。
日本に向けて出国する前の72時間以内に行ったPCR検査の証明書提出と、入国時の検査の両方が必要となる。
期間は9日から新型コロナウイルス感染拡大に伴い発令された緊急事態宣言が解除されるまで。
これに伴い、11カ国・地域と合意しているビジネス関係者らの往来に関し、PCR検査を免除する特例措置も一時停止する。

外務省のホームページにはこのように書かれています。

新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について

(1)緊急事態宣言期間における検疫の強化
新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言発出に伴い、同解除宣言が発せられるまでの間、入国拒否対象国・地域からの渡航か否か、また、ビジネストラック及びレジデンストラックの利用か否かを問わず、日本人も含め全ての入国者・再入国者・帰国者に対し、出国前72時間以内に実施したCOVID-19に関する検査による「陰性」であることの検査証明の提出を求めるとともに、入国時の検査を実施します。その上で、引き続き、検疫所長の指定する場所(自宅等)で14日間待機し、国内において公共交通機関を使用しないことが要請されています(変異株流行国及び変異ウイルスの感染者が確認された国・地域からの渡航の場合は下記(2)をご確認ください)

今まで入国時の検査が免除されていた人も検査するようになるのは一歩前進ですが、それでも相当数のすり抜けは出ると思われます。

以前のブログ
新型コロナの入国制限緩和、水際対策は大丈夫か?
でも指摘しましたが、潜伏期間の問題があります。

新型コロナ感染症の厄介な性質ですが、潜伏期間が長く、しかも発症する前から感染力があるという点です。


参考文献:Temporal dynamics in viral shedding and transmissibility of COVID-19

潜伏期間はWHOのサイト にこのように記載されています。

The time from exposure to COVID-19 to the moment when symptoms begin is, on average, 5-6 days and can range from 1-14 days.
COVID-19にさらされてから症状が現れるまでの時間は、平均して5~6日で、1~14日の範囲です。

潜伏期間が最長2週間で、感染力がある(ウイルスを放出する)のが発症の2~3日前からなので、長い時は感染してから10日間位、検査しても検出できない可能性があります。

これを日本の水際対策で考えると、こうなります。


 
陰性証明を取得するための検査も、入国時の検査も、その直前に感染した場合は検出できずにすり抜ける可能性が高いです。

すり抜けの対策として、入国後14日間の自宅等の待機が要請されていますが、あくまでも「要請」なので、守られない可能性は十分考えられます。

変異ウイルスの流行国(現状は英国と南アフリカ)からの入国の場合は、次のようになります。


 
入国3日目に再度検査することになっていますが、これも結局、潜伏期間は検出できない可能性があります。

特に気になるのは、ウイルスを放出する感染者が、同じ飛行機の近くの席にいた場合とか、空港の入国審査や荷物待ちなどの時に近くにいた場合です。
お互いマスクをして声を出さず、じっとしていれば大丈夫かもしれませんが、食事をしたり、せきをしたり、飛沫に接触したり、いろいろリスクはありそうです。

再検査の入国3日目というのは、潜伏期間の平均5~6日というところから決めたと思われますが、これはあくまでも「平均」です。

変異ウイルスの場合でも潜伏期間やウイルスの放出が同じ日数でいいのかも気になります。

何となく、入国3日目というのは少し早い感じもするのですが、政府はどこまで検証して決めたのでしょう?

政府はとにかく渡航者を完全には止めたくないようですが、それならなおさら、もっとすり抜けを極力防止する検査・隔離体制を構築すべきだと思います。

それにオリンピック、どうするんでしょうね・・